第一部 「蠢動」  -  第二章「九天玄女」

 猛烈な攻撃だった。丸一日、準備の時があったし、九天玄女の部下だという時遷から、事前に攻撃の(しら)せを受けていたので、大きく崩されることはなかったが、それでも勢いを止めるのが精一杯だった。
「こりゃ、大変だな。禁軍の奴等、半端な意気込みじゃねえ」
 陳達は、思わず呟いていた。
 夜明けとともに、攻撃が始まった。夜のうちに移動したようだが、その動きは時遷の配下によって細大漏らさず報告されていた。陳達は夜明け前から隊伍を整えていた。それでも踏み(とど)まるのがやっとだった。
「奴等、別もののような意気込みですな」
 腹心の董超(とうちょう)が言った。銅提山の頃からの仲間で、目立たないがよく気の付く男だった。四十を過ぎていて陳達より年上だったが、上に立つより一段下で策を立てるのが気に入っているようだった。部下思いで、若い兵からの信頼も(あつ)かった。

全文をPDFで読む