第一部 「蠢動」  -  第二章「九天玄女」

 騎馬千騎が亀伏山の麓に整列していた。歩兵の本隊三千人は、着くのが夕になりそうだった。本隊が着く前に、とりあえず地形や侵入路だけでも調べておくことだ。杜愔(といん)はそう考えて斥候(せっこう)を出していた。さほど大きな山ではない。むしろ、小ぶりでなだらかとさえ言える山だった。ここに小賊が立て()もっていたのは知っていた。ただ、太原府を襲うこともなく、取り立てて無法を働くわけでもなかった。むしろ、賊としては大人しいとさえ言えた。だから、これまで亀伏山に注目したことはなかった。山を詳しく調べたのも、これが初めてだった。
どうしてこんなことになったのか。杜愔には理解できなかった。相手はたかだか百人前後だったという。もちろん、禁軍が壊滅的な打撃を受けたのは、最後に現れた遼兵によってではあったが、それ以前に捕らえれば済んだ話だった。何故それが出来なかったのか。

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