「痛くはないですか」
楊林が訊いた。
「ええ、大丈夫です」
曹瑛が答えた。
曹瑛の両手は後ろ手に縛られ、短弓も矢壺も取り上げられていた。曹瑛が考え出した策だった。荒縄には、すぐ切断出来るようにあらかじめ切れ込みを入れてはいたが、たっぷりと雨を吸った縄は、曹瑛の手首に深く食い込んでいる。切断した時に手が
「これ以上緩めないでください。
曹瑛が言った。
「ですが、時間がかかると血の巡りが悪くなります」
楊林の想いは、それだけではなかった。たとえ策であっても、曹瑛に縄をかけるのが、どうしても辛いのだ。
「楊林。ここは曹瑛殿に任せることだ。それよりも時が来たらば、遅滞なく縄を切れるように心の準備をしておくことだ」
楊佸が言った。