第一部 「蠢動」  -  第四章「宋家党」

 朝から嵐の予感がしていた。西の空が黒々とした雲でおおわれ、なまぬるい風が肌にべたつくように感じられる。杜遷(とせん)は部下を待っていた。遠くで稲光(いなびかり)が見え、雨も昼過ぎからは強さを増している。久しぶりの嵐だ。杜遷は独り言を呟いた。宮城が騒がしい。その一報を運んできたのは、杜遷が信頼している(きょう)の一人だった。何かが心に響いた。だが、はっきりと感じたわけではなかった。だから、引き続き監視するようにとだけ命じた。
 宋家党の事件が起きてすぐに、杜遷は開封府に(つか)いを出した。本当は、すぐにでも救出に向かいたかった。黒旋風と宋家党の若者達が、からくも脱出したことを知った。それまで、見えないところで黄文柄の邪魔をした。廂軍(しょうぐん)を荷車で遮ったり、兵の糧食に眠り薬を混ぜたりしていた。姑息な方法だったが、開封府の元締めの指示を仰いでいないうちは、その程度のことしか出来なかった。

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