第一部 「蠢動」  -  第一章 「政和三年春」

 呉乞(うき)(まい)が入って来た。怒りに顔が紅潮している。
「兄者、俺はすぐ行く」
 怒鳴るような声だ。
「分かっておる。儂も行く」
 呉乞買は、一瞬驚いた顔をした。
「兄者もか。なら、遼はどうする。軍紀違反に問われるぞ」
「分からんように動く。迅速に発ち、迅速に戻る。出す兵も少しにする」
「太原府は大きな城郭だ。廂軍で二万はいる。禁軍も五千以上いるはずだ。そんな中に、どれだけ出すつもりだ」
 阿骨打は目を閉じている。
「五百」
 呉乞買は目を剥いた。

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