呉乞(うき)買(まい)が入って来た。怒りに顔が紅潮している。 「兄者、俺はすぐ行く」 怒鳴るような声だ。 「分かっておる。儂も行く」 呉乞買は、一瞬驚いた顔をした。 「兄者もか。なら、遼はどうする。軍紀違反に問われるぞ」 「分からんように動く。迅速に発ち、迅速に戻る。出す兵も少しにする」 「太原府は大きな城郭だ。廂軍で二万はいる。禁軍も五千以上いるはずだ。そんな中に、どれだけ出すつもりだ」 阿骨打は目を閉じている。 「五百」 呉乞買は目を剥いた。