第一部 「蠢動」  -  第二章「九天玄女」

 公孫勝は部屋の窓から、昇りつつある朝日を眺めていた。隣の部屋では、宋雪華がまだ眠りに就いているはずだった。おおよそのことは、九天玄女の手の者から聞いていた。だが娘達から聞いた話では、それを遥かに超えた非道な仕打ちだった。
 こんなことが(まか)り通っていいのだろうか。公孫勝は嘆息した。罪がないどころか、知恵と努力で人々に希望を与えてきた者達を、こんな悪虐な方法で排除しようとする。それも市井の商人だけでなく、仮にも大きな城郭(まち)の長が加担してだった。自分達の欲のためだけに。
「この宋という国では、こんなことは珍しくはないのだろうな」
 思わず声にして、公孫勝は呟いていた。

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