第一部 「蠢動」  -  第四章「宋家党」

 四人が城壁を越えたのを確認した。杜遷が楊佸を見た。
「うまく脱出した。俺達も逃げよう」
「そう簡単に逃がしてくれそうにない」
 楊佸が斧を振りながら答えた。
 さきほどの廂軍とは、比べ物にならないほど訓練された兵だった。もっともここ河東路は、遼との国境が北にあり、中央や南の路とは異なり、廂軍も軍事訓練を受けている。冬教
(
とうきょう)
なども必ず行われ、それによって民兵も精強だった。保甲
(
ほこう)
もしっかり残っている。さきほどの廂軍が情けないと、言えば言えた。
「駄目かな」
 杜遷が自信なげに呟いた。
「侠の皆も疲れている」
 確かに動きが悪くなっている。倒れたまま動かない者も、六人ほどになっていた。心は痛んだが、後悔はしていなかった。
「皆、
(
おとこ)
として立ち上がったことだ。死んだ者も、後悔はしていないだろう」

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