「今日を最後にする」
陽が昇って一刻ほどは経っていた。爽やかな風が山肌を撫でて、春らしいうららかな一日を予感させた。
「もう、この
杜愔の目は澄んでいる。迷いも見られなかった。
「今日の戦は」
興仁貴が訊いた。
「全力を尽くす。それが、あの者達への礼儀だ」
杜愔がきっぱりと言った。
「分かりました。武人としての誇りをかけて、全力で戦に向かいます」
「ただ、
「心がけます」
興仁貴は、思わずほっとしている自分に気付いた。敵ではあるが、殺したくはない。いつからか興仁貴は、そんな想いをいだくようになっていた。