陳統が砦に着いた時、雪華は石勇に抱(かか)えられて小屋の前にいた。その隣には、公孫勝と平真もいる。 「姉ちゃん、準備が整ったよ」 陳統が告げた。 「そうか。それで、水の量はどのくらいだ」 訊いたのは公孫勝だった。 「かなりの量だよ。李逵の小父さんは、砦の端(はし)じゃなくて林の中に避難するようにって言ってたよ」 「その方がいいだろう。大きな木に抱きついた方が安全だな」 公孫勝の言葉に、雪華が不安そうな表情になった。 「公孫勝様、それだけの水なら、禁軍の兵士は……」 公孫勝は、雪華の顔から目を逸(そ)らした。 「兵士達に大きな犠牲が出るのでは」 雪華が続けた。公孫勝は答えなかった。