第一部 「蠢動」  -  第四章「宋家党」

 陳統が砦に着いた時、雪華は石勇に(かか)えられて小屋の前にいた。その隣には、公孫勝と平真もいる。
「姉ちゃん、準備が整ったよ」
 陳統が告げた。
「そうか。それで、水の量はどのくらいだ」
 訊いたのは公孫勝だった。
「かなりの量だよ。李逵の小父さんは、砦の(はし)じゃなくて林の中に避難するようにって言ってたよ」
「その方がいいだろう。大きな木に抱きついた方が安全だな」
 公孫勝の言葉に、雪華が不安そうな表情になった。
「公孫勝様、それだけの水なら、禁軍の兵士は……」
 公孫勝は、雪華の顔から目を()らした。
「兵士達に大きな犠牲が出るのでは」
 雪華が続けた。公孫勝は答えなかった。

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